Smiley face

(23日、第107回全国高校野球選手権大会決勝 沖縄尚学3―1日大三)

 試合前日の夜も、朝起きてからも、不思議な感覚だった。日大三の竹中秀明(3年)は、テレビに映る自分たちの姿を見て思った。「これって現実なのかな。夢なんじゃないのかなって」

 捕手として、この日はタイプの違う同学年の3投手をリードした。コントロールのいい谷津輝には低めを意識して、相手が絞りにくい配球に。慎重派の2番手・山口凌我には「強気で自分のピッチングをしてこい」と鼓舞し、3番手の近藤優樹には、ピンチの場面で「思い切って投げろ」と声をかけた。

 それぞれ1失点ずつしたが、大量失点は許さなかった。もう少し低く構えていれば、もっと外で構えていれば――。挙げればきりがない。「でも、投手陣は投げきってくれた。打たれたことについては、悔いはないです」。すっきりとした表情だった。

 昨夏の西東京大会決勝は早稲田実にサヨナラ負けした。主力だった同学年の本間律輝、松岡翼が泣いている姿を見て、「もう、そんな思いはさせたくない」と誓った。でも、昨秋の都大会は準々決勝、今春の都大会は準決勝で敗退。「振り負けないチーム」を目指して、バットをたくさん振り込んできた。

 その成果が出たのは四回。追い込まれてから、球を引きつけて逆方向に安打を放った。「いいところを見せられた。このチームは、本当に粘り強い打線になった。打ち勝って、ここまできた。一生の思い出かな」

 試合後の閉会式で、ゆっくりとグラウンドを見渡した。満員のスタンド、歓声。試合中は無我夢中で見えていなかった周りの景色が、はっきりと目に映った。夢だと思っていた時間が、ようやく現実だったんだと実感がわいた。「高校野球が終わったんだな。やりきった。ここまで来られたんだから、胸を張って帰ろうって」。泣きじゃくる仲間の肩を、たたいてまわった。

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